寄合型生産管理システム由来

精度の高いコミュニケーションが出来るようにする為の仕組み作り

寄合型システムが何故必要か?

 本システムはコンピュータを使った生産管理のシステムですが、生産管理の重要な機能である製造計画について、製造現場で働く人がお互いにコミュニケーションを取り、製造担当者自身が製造計画をコンピュータに登録することを可能としたシステムです。このようなシステムを製作した理由はいくつかありますが、大きな理由として実際にそうやって動いている製造現場が多いことと、これをやらないと製造計画の変更の多い製造現場では本当の見える化が出来ないからです。
 一般的な製造工場では、生産計画から製造計画を作成してトップダウン方式で製造現場に指示を出します。このトップダウン方式の指示だけだと、計画変更が少ない工場であれば問題にはなりませんが、頻繁に計画変更が発生する工場だと問題になります。トップダウン方式では、日々、現場で起こっている計画変更の要因を捉えきれないので、製造計画データの変更が出来ません。製造が計画通りに進んでいけば問題はありませんが、現実には、不良が発生したり、特急品が入ってきたりと計画通りには進んでいかないことが発生します。現実の予定が変わった時にコンピュータのデータを変更していかないと、次の変更が発生した時に、コンピュータのデータと現実では既に差異が発生しているので、何をどう変更して良いのか判別できず、データを登録することが出来ません。計画変更が出来ないと、生産効率の良い製造計画がない状態での製造を行うやり方に戻ってしまいます。そして現実とコンピュータデータの乖離が発生すると、製造現場担当者はコンピュータデータを見なくなり、最終的には使わなくなります。
また、製造計画の変更が多い製造現場だと、最初から製造計画自体を製造現場に丸投げしているような場合もあります。計画された情報がない場合、製造現場では、「自分たちの見える範囲で優先してすべきこと」から行っていきます。この考え方はある意味正しいのですが、この考え方だけで行っていくと、生産効率が悪くなり製造コストが高くなります。また共有できるデータがありませんので、効率以前に見える化も出来ておらず、新規受注が受け入れられるかどうかの正しい判断もできなくなります。

トップダウンからボトムアップ

 本システムは工程管理者が作成した製造計画に基いて製造現場で働く人が現場の事情に合わせて製造計画を変更することが出来るようにしていますので、トップダウンからボトムアップ方式でデータの連携が出来、生産効率の良い、本当の見える化が出来るシステムになります。
一般的な生産管理のシステムでは、一度計画した製造計画が殆ど変更されない場合を除いて、現実の製造計画と、コンピュータの中のデータ(情報)を全て一致させることを諦めている製品が殆どです。何故かと言うと現実に起こっていることを全てデータ化しようとすると、専任の状況把握を行う人とその情報をコンピュータにインプットするオペレータが必要になります。しかも情報把握を行う人は、製造現場の経験豊富な人を選任しないと的確な状況把握ができないですし、経験の浅い担当者を選任すると、製造現場の担当者に聞いてまわらなければならず、お互いに手を取られ効率が悪いだけでばなく、製造現場から疎ましがられたりします。

AIとIOT

 「製造現場で起こっている製造計画変更要因を捉えきれない」と前に書きましたが、「AIやIOTを使えばできるでしょう」と言われることがあります。完成度は別にして、それらしいものは出来るのではないかと思いますが、実際に使えるシステムにするのは、論理的にかなり困難であり、費用や要員リソースが膨大に必要となり、ほぼ不可能と言っていいと思います。
現在、AIやIOTの利用が盛んに提唱されています。IOTで必要な情報を収集して人間が判断・実行する代わりにコンピュータが判断し実行する仕組みです。ひと昔前は考えられなかったようなことが現実にコンピュータで出来るようになってきています。約30年前に一時AIブームがありましたが、今一つ浸透しませんでした。30年経過して再びブームが起っていますが、今回は、かなりのところまでAIが浸透していくのではないかと思われます。30年前と現在の一番の違いはコンピュータの処理能力が各段に進歩し、大量のデータを早く処理出来るようになり、ディープラーニングや機械学習が出来るようになったことです。大雑把に言うとそれだけですが、それでコンピュータが計算してアウトプットした処理結果を、「人工的な知能を用いた”判断”」と言う言葉で表現しているのが現在のAIです。これは30年前も今も変わりません。的確な判断をするためには膨大なデータが必要になります。AIを利用する為には、その前提をなる大量のデータ(経験)を必要としますが、そのデータを収集することも難しいですし、それを大局的に捉えて判断するのは、非常に難しいです。
現状のAIシステムで実現できるのは、狭い世界と考えていた方が賢明です。AIシステム化したい範囲(部分)を決めて全て、自動化させたい部分を決めて、AIツールとして利用するのが効果的に活用できる方法であると思います。コンピュータの得意分野は、覚えておくことと、同じ処理を前回と全く同じように繰り返し実行することですので、ツール(道具)として利用することを考えるべきで、全てコンピュータにお任せと言う考え方はしない方が良いと思います。

精度の高いコミュニケーション

「寄合型生産管理システム」は、「人同士が精度の高いコミュニケーションを取り、どうすれば良いかを人が考えていくことが一番重要であり、コンピュータはその手助けが出来るツールとして位置付ける」との考えがベースになっています。現在の少子高齢化が進んでいる日本では、「生産効率向上」、「働き方改革」、「多様性の尊重」と言うことが盛んに言われております。これらのことを実現していくためには、コミュニケーションの精度、密度を上げることが必要で、その為にはコミュニティの中のメンバー(個々人)が持つ意識の改革と、より精度の高いコミュニケーションを実現する為のコンピュータ等を使った情報の共有と活用の仕組み作りが必要です。
 個々人の意識はコミュニケーションの取り方に現れてきます。精度の高いコミュニケーションはコミュニティの中で前向きな意識を持った者同士で行うことが出来ます。一方の者が前向き意識でコミュニケーションを取ろうとしても相手に前向きな意識がないと、精度の高い密なコミュニケーションとはならず、一方的な指示や要求になりがちです。精度の高いコミュニケーションを取れるようにする前向きな意識とは、自分が所属する組織、仕事、仲間に関心を持ち、常にどうすればよりよくなるのかを考えながら接すると言うことです。
 戦後の高度経済成長時代は、皆同じ方向を向いていたと思います。社会全体もそうですし、会社、家庭、個人の価値観も同じ価値観を持っていた人(組織)が多かったように思います。発展していくには当然ですが、皆同じ方向を向いていた方がより伸びが大きくなり、それはとても良いことなのですが、一方で少数意見が認識されなかったり、サービス残業や心身が崩壊するまで、働かされる(働いてしまう)等の弊害をもたらしました。それらは勿論、是正されなければなりませんが、組織のベクトルを合わせて進んでいくということは、昔も今も必要です。ただ、最近はどうもその意識が薄れてきているように思います。当事者意識や責任感と言うものが、薄いまま仕事をしている人が増えてきているように思います。もちらん、組織(会社)の教育や評価のシステムがちゃんと出来てなかったりと言うことはあると思いますが、それ以上に重要なのは、組織を構成している個々人の考え方、意識です。今後AIも普及していき、単純な仕事はどんどん人間がしなくてもすむような社会になっていくと思います。そのよような社会の中で意識を持って職務にあたっている人と単に受け身で職務を行っている人との格差はどんどん広がっていくと思われます。

コミュニケーションの為のツールとしてのシステム

 ベクトルを合わせていくことは今後も必要ですが、そのやり方がこれまではトップダウン指示でしたが、今後はコミュニケーションによる共同作業に代わっていくと思われます。指示ではなく合意で進んでいくものと思われます。合意・判断をする時に、人は自身独りでは全ての必要な情報を持ち合わせていないことを知っていますので周りの人に聞いたりお願いしたりして最適な答えを導きだそうとします。これがコミュニケーションであり、そのコミュニケーションの中心になるなる担当者は、一般的に、そのやろうとしている仕事に一番、精通している人、あるいはその代理人になります。生産効率を上げる一番近い道は、このコミュニケーションの密度・精度を上げるのが一番です。コミュニケーションのアウトプットされた情報をツールとしてのコンピュータにインプットして効果的に活用していくことが、真に生産性を上げることに繋がっていきます。
コミュニケーション力を上げていくのは、前述したように、相手に関心を持ち、前向きな意識を持つことが必要と書きました。では、具体的に、どのような心構えで、どのような点に注意して行かなければならないのでしょうか?その考え方について「企業を支え変革する人財像」と言うテーマで、寄合型の名付け親でもある林田先生に執筆頂きましたので、今後何回かにわたって弊社ホームページに掲載していきます。
株式会社 シスディブリンク
代表取締役 高橋 基